みずうみ/これは戦争なんだから
みずうみ 高橋眞湖
昔は良かったと言うのはやめよう
戦争や貧困や公害病や
言い難き苦難を苦しみつつ生き
亡くなった人々の魂が
今も私達に叫ぶから
昔は良かったと言うのはやめよう
核兵器 原発 貧富の拡大 難病 天災 自然破壊 虐待
つらいことは十指に余り
差別と分断のいとも簡単にうまれる現代
それでも、昔は良かったと言うのはやめよう
この瞬間に産声をあげた赤ちゃん
初めての三輪車に目を輝かせる幼子
卒業証書を胸に歩いてくる若者が見える
私たちは、この場所で、この時代を生きてゆく
霧の中
目の前に広がる大きなみずうみ
岸には一艘の小舟
さあ、しっかりと手をつないでのりこもう
そして私たちは静かにオールを漕ぎはじめる
さざ波が光りはじめる
向こう岸へわたろう
※高橋眞湖さんは、北見の読書会で知り合った置戸町在住の三浦綾子読書会会員です。すばらしい詩を送ってくださったので紹介しました。下は私が今日作った戯作です。
これは戦争なんだから
これは戦争なんだから
みんな、一つになって戦うんだ
これは戦争なんだから
人と違う自分だけの考えを持つな
これは戦争なんだから
外に出ず、閉じこもって、息をひそめてろ
これは戦争なんだから
夢を叶えることなんて、お預けにしろ
これは戦争なんだから
手をつないで歩いてる場合じゃない、離れろ
これは戦争なんだから
顔を合わせて語り合っちゃいけない、離れろ
これは戦争なんだから
誰かが死んでも泣いちゃいけない
これは戦争なんだから
昨日までの言葉なんか通じると思うな
これは戦争なんだから
政府がくれるマスクをつけて、武器をもって闘え
これは戦争なんだから
従わない奴を、引きずり出して吊るせ
これは戦争なんだから
いつ死んでも仕方ないんだ、文句を言うな
これは戦争なんだから
愛する人に看取ってもらえるなんて思うな
これは戦争なんだから
魔物が出て来ても、じっとおびえて、耐えるんだ
これは戦争なんだから
黙って
黙って
黙って……
これは戦争なんだから
物語は中断だ
彼女のことは忘れろ
誰かに会いに行こうなんて思うな
これは戦争なんだから
なんでこんなことになったんだろうか?なんて考えるな
これは戦争なんだから
もう誰も、愛しちゃいけない
これは戦争なんだから
誰がお前を殺すか分からないんだから
お前が誰を殺すかも分からないんだから
これは戦争なんだから
これは戦争なんだから
……
終われば全部忘れられるさ
何もかも
何もかも
たぶん何もかも
これは戦争なんだから
このブログを書いた人

- 三浦綾子読書会代表/三浦綾子記念文学館特別研究員
-
1962年岡山県生まれ。1992年から2006年3月まで福岡女学院短大および大学で日本の近代文学やキリスト教文学などを講義。2001年より九州各地で三浦綾子読書会を主宰、2011年秋より同代表。
2006年、家族とともに『氷点』の舞台旭川市神楽に移住し、三浦綾子文学館特別研究員となる。2007年、教授の椅子を捨て大学を退職して以来、研究と共に日本中を駆け回りながら三浦綾子の心を伝える講演、読書会活動を行なっている。
著書に『「氷点」解凍』(小学館)、『塩狩峠』の続編小説『雪柳』(私家版)、編著監修に『三浦綾子366のことば』『水野源三精選詩集』(いずれも日本基督教団出版局)がある。NHKラジオ深夜便明日への言葉、テレビライフラインなどに出演。
最新の記事
おたより2022年10月6日(木)おたより 23 朗読CD「李(すもも)」のご感想
おたより2022年8月2日(火)おたより 22 「李(すもも)」朗読会のご感想
おたより2022年5月16日(月)おたより21
おたより2022年3月11日(金)おたより ⑳