2021年10月14日(木) / 最終更新日時 : 2021年10月15日(金) 森下 辰衛 文学散歩 燃える紅葉の瀬戸牛、滝上 燃えるような赤、目のくらむような金色、北海道の紅葉はまことに鮮明と言おうか、美麗と言おうか、あの時ほど美しい紅葉はなかったような気がする。(『この土の器をも』) 2021年10月13日、西興部から、光世さんのふるさと北見滝上を訪ねて来ました。
2020年11月28日(土) / 最終更新日時 : 2020年11月28日(土) 森下 辰衛 文学散歩 淋しくはない、キリストと話をしているから-三浦光世の父貞治 11月28日は三浦光世さんの父貞治(ていじ)さんの命日です。1927(昭和2)年32歳でした。貞治さんは1895年福島市に生まれ、20歳になるかならぬかで単身渡道、北見滝上に入植して開拓を始めました。十代のとき福島県の伊達でキリスト教に出会っていたようです。入植した滝上の滝西地区は両側から山が迫る狭い土地でした。
2020年11月23日(月) / 最終更新日時 : 2020年11月23日(月) 森下 辰衛 三浦綾子を読む 一番大事にされなければならないのは、弱い人です。-三浦光世の母シゲヨ 1978年11月23日三浦光世さんの母繁代(シゲヨ)さんが亡くなりました。死因は心臓喘息78歳でした。結婚の時期は正確には分かりませんが、おそらく1917年ごろ、シゲヨさんが福島の宍戸家から北海道北見滝上の三浦貞治さんに嫁いだときはほぼ17歳。貞治さんは数年前に福島から単身入植して開拓していました。
2020年11月13日(金) / 最終更新日時 : 2020年11月23日(月) 森下 辰衛 三浦光世 罪人の吾の手垢の垢染(そ)みにけり -光世さんの受洗記念日 窓の外をシャボン玉いくつも流れゆく十一月十三日吾が受洗記念日 20回目の受洗記念日だった1968年の短歌です。委ねることを覚えたあの日に与えられた不思議な平和が感じられます。1949(昭和24)年11月13日(日)、三浦光世さんは洗礼を受けてキリスト者となりました。光世さんは1941年中頓別の営林署に勤め始めてほどなく腎臓結核を発症し、北大病院で片方の腎臓を摘出する手術を受けました。
2020年10月30日(金) / 最終更新日時 : 2020年12月3日(木) 森下 辰衛 三浦光世 あなたの微笑みの意味-三浦光世の短歌⑦ 今日10月30日は、光世さんの7回目の召天記念日です。光世さんは、私たちに、微笑みというものの意味と力を教えてくれた人でした。あの微笑みの優しさと温かさを、私たちは忘れることが出来ません。 「着ぶくれて吾が前を行く姿だにしみじみ愛し吾が妻なれば」を読みます。
2020年10月29日(木) / 最終更新日時 : 2020年11月8日(日) 森下 辰衛 文学散歩 紅葉の観音台でお墓デートしましょう 「いつきても、ここは公園みたいだね」(略)どの墓の敷地も一律に二坪で、御影石の墓石も和洋のちがいこそあれ一定している。“藤戸家の墓”と書いた墓の前にくると、ツネが言った。 「おじいさん、またデートにきましたよ」(『果て遠き丘』) 観音台は三浦夫妻のお墓のある丘です。
2020年8月24日(月) / 最終更新日時 : 2020年8月26日(水) 森下 辰衛 三浦光世 8月24日は握手記念日 8月24日は1955(昭和30)年、光世さんが綾子さんを見舞った三回目の日。この日光世さんは「神よ、わたしの命を堀田さんに上げてもよいですから、どうか堀田さんを癒してください」と祈りました。なぜこんな祈りができたのでしょう?前回、2回目の訪問は7月3日でした。そのとき綾子さんは一冊のアルバムを見せてくれました。
2020年8月22日(土) / 最終更新日時 : 2020年8月23日(日) 森下 辰衛 文学散歩 手を伸ばせば天井に届きたりき ー 三浦光世の短歌➅ 手を伸ばせば天井に届きたりきひと間なりき吾等がはじめて住みし家なりき 光世さんは三歳の時に父親を結核で亡くしています。父を殺した菌は光世少年の中にも侵入し十七歳のときには腎臓結核で腎臓を片 […]
2020年7月19日(日) / 最終更新日時 : 2020年7月19日(日) 森下 辰衛 三浦綾子を読む 「最愛」― 開け放たれた庭にバラが咲いた― 三浦光世の短歌⑤ その日は、彼と初めて会った日のように、美しく晴れ渡っていた。わたしは、開け放たれた庭を、ベッドの上に起き上って眺めた。大輪のバラがほころび、わたしは何かいいことがあるような予感がした。忘れもしない七月十九日だった。三浦光世から部厚い封書が届いた。手紙には、あなたの死んだ夢を見て、涙のうちに一時間あまり神に祈った。役所に出勤しても、しばらく瞼が腫れていたとあり、わたしの名の上に「最愛なる」という字が冠してあった。
2020年7月16日(木) / 最終更新日時 : 2020年7月16日(木) 森下 辰衛 三浦光世 君を想ふ夕べかなしくて ― 三浦光世の短歌④ 君を想ふ夕べかなしくて袖に来し白き蛾を鉢の菊に移しぬ 光世さんが綾子さんと出会って、一年後の夏の歌です。この歌に詠まれた夕べの「かなし」さは、「君」への愛しさでもあるけれども、ギプスベッドに捕われのその人の病状の深刻さを想い心配する「かなしさ」でもあるでしょう。日本語の「かなし」が「愛し」と「悲し」との二つの要素を持つこと、あるいは根源的には一つであって、分けがたい深みでの悶えと祈りの心であることが、よく分かる歌です。