お誕生日に
今日は二人の大切な友だちの誕生日です。そのうちの一人が小林弘昌さんです。小林さんは前川正さんが亡くなられてすぐの、1954年6月21日生まれですから、66歳になられました。この写真は2006年6月に撮ったもので、左が小林さん、右は『続泥流地帯』の登場人物でもある清野(旧姓吉田)ていさんです。小林さんの車でこの日、上富良野のていさんのお宅を初めてお訪ねしたのでした。右に少し雰囲気だけ見えかけている所にていさんのお宅があるのですが、この家屋は実は元々泥流の年から建っていた母屋につなげて増築したものでした。でも母屋はもうありませんでした。1997(平成9)年に数百メートル離れたところに移築されて、上富良野開拓記念館となったからです。
ていさんはもう90歳というお齢でしたが、本当に聡明できれいで、茶目っ気まである、素敵な方でした。泥流の起きた日のことを、山や富良野線や畑やお隣の米村さんのお宅など指さしながら、お話してくださいました。小林さんと私は、二人でそれをお聴きしましたが、小林さんにとって『泥流地帯』は最も好きな本のひとつで、特に「人間の一番の勉強は困難を乗り越えることだ」という言葉が座右の銘でしたから、この日の訪問と出会いは、特に感激だったと思います。小林さんは、いつもそうですが、一つ一つの言葉をほんとうに大事に受けとめるように聴いていました。ていさんも、そんな小林さんにすぐに好感を持たれたようで、「小林さん、小林さん」と旧知のように呼んでおられたのが印象的でした。小林さんが一緒に行ってくださったので、ていさんも私を安心して迎えて、信頼してくださったのかも知れません。
この写真は、私が今までに撮った沢山の写真の中でも、一番好きなもののひとつです。お家を出て、感謝してもう車に乗ろうという時だったと思います。二人は視線を合わせていませんが、それぞれの姿勢やまなざしや表情から、お人柄が本当に良く感じられて、とても素敵です。見るたびにうれしく懐かしくなる一枚です。向こうに見える車で、2006年の秋に釧路、弟子屈(川湯)、斜里、網走と開拓を始めたばかりの道東読書会を、小林さんと一泊二日で回ったことも忘れられない思い出です。
今は簡単にはお会い出来なくなったお二人ですが、またいつかお目にかかる日を楽しみに、祈りつつ待っています。下はその日、ていさんの庭に咲いていた石楠花の花です。上の写真の小林さんの後ろに葉が少し見えています。
このブログを書いた人
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1962年岡山県生まれ。1992年から2006年3月まで福岡女学院短大および大学で日本の近代文学やキリスト教文学などを講義。2001年より九州各地で三浦綾子読書会を主宰、2011年秋より同代表。
2006年、家族とともに『氷点』の舞台旭川市神楽に移住し、三浦綾子文学館特別研究員となる。2007年、教授の椅子を捨て大学を退職して以来、研究と共に日本中を駆け回りながら三浦綾子の心を伝える講演、読書会活動を行なっている。
著書に『「氷点」解凍』(小学館)、『塩狩峠』の続編小説『雪柳』(私家版)、編著監修に『三浦綾子366のことば』『水野源三精選詩集』(いずれも日本基督教団出版局)がある。NHKラジオ深夜便明日への言葉、テレビライフラインなどに出演。
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