2020年12月29日(火) / 最終更新日時 : 2020年12月30日(水) 森下 辰衛 リルケ 奇跡がないとしたら ― 前川正とリルケ 12月29日はリルケの命日です。前川正はリルケの代表作である『マルテの手記』と書簡集(こちらはドイツ語で、自分で訳してもいたようです)を愛読していました。前川は、『マルテの手記』の主人公マルテが「淋しくてならぬ、悲しくてならぬ時は」博物館に行ったと書かれているのに倣って、自分も悲しいときには図書館に行くのだと綾子宛の手紙に書いています(『生命に刻まれし愛のかたみ』p.30)。
2020年12月28日(月) / 最終更新日時 : 2020年12月28日(月) 森下 辰衛 前川正 李(すもも)―前川秀子から綾子への手紙 抄3 三月末、ぬかるんでいた道の雪も少なくなって、馬糞風が吹き始めるころでした。札幌の大学近くの下宿の住所で、あの子から葉書が来ました。大学病院で診てもらった結果を簡単にしるしたあと、「一年遅れの成人のお祝いのようです」と、一行書かれていました。青いインクのいつもと変わらない文字でした。それから、身の回りの片づけをして旭川に帰って来た日、夕食が終わって、お茶を出すとき、柱時計が八回鳴りました。
2020年11月16日(月) / 最終更新日時 : 2020年11月16日(月) 森下 辰衛 前川正 李(すもも)― 前川秀子から綾子への手紙 抄 2 珍しく雪の遅い年でした。胸を病む人のいる家にはありがたいことでしたが、でも季節はいつまでも猶予してはくれません。その日、昭和二十八年の十一月十六日、お昼から旭川に初雪が降り始めました。気温も下がって初雪がそのまま根雪になりそうな気配でした。雪を見た正は、あなたの家に行くと言いだして、着替えを始めたので、驚きました。
2020年11月10日(火) / 最終更新日時 : 2020年11月10日(火) 森下 辰衛 文学散歩 秋の春光台公園文学散歩 春光台公園は、旭川市中心部から北へ約5 kmに位置し、なだらかな丘陵地に帯状にある面積52.42ヘクタールの公園です。国道12号(旭川新道)が公園南側を通り、北海道道72号旭川幌加内線が縦断して公園を東西に分けています。園内東側の沢筋には約750mに渡ってミズバショウが自生しています。三浦綾子の自伝小説『道ありき』の舞台です。
2020年10月26日(月) / 最終更新日時 : 2020年10月26日(月) 森下 辰衛 前川正 前川正から贈られた『きけわだつみのこえ』 1949(昭和24)年10月26日(水)、堀田綾子は前川正から『きけわだつみのこえ』を贈られました。正は扉裏に以下のように書いていました。 これは全く私達と同じ世代の友達の声 而も彼等は死に 私達は生きた 私達の生は 彼らに負ってゐる さあ、更めて かつての自分たちの声を聴かう― 一九四九・一〇・二六 正 綾子様
2020年6月30日(火) / 最終更新日時 : 2020年7月4日(土) 森下 辰衛 文学散歩 今日はあなたの百歳の誕生日 前川正さん。ちょうど百年前の1920(大正9)年6月30日、旭川市宮下通り19丁目であなたは生まれました。今日はあなたの100歳の誕生日。なぜあなたはあの場所で、あの時代に生まれたのでしょうか?今その場所を訪ねても、確かな場所は分かりません。何の記念の目印もなく、道行く人もそれを知りません。
2020年6月28日(日) / 最終更新日時 : 2020年7月4日(土) 森下 辰衛 文学散歩 光世さんの最後の祈り― 『道ありき』文学碑除幕式 真実に生きようとして傷つき、心も体も死の淵にいた一人の女がふしぎな光に刺し貫かれた日、魂の再生の物語は始まりました。三浦綾子の人生に大転換が起きたのです。この事件の舞台となった春光台の丘に立つと、彼女の魂の声が聞こえてくるようです。2014年6月28日(土)、この地に三浦綾子『道ありき』文学碑が建立され、除幕式が行われました。
2020年5月13日(水) / 最終更新日時 : 2020年7月4日(土) 森下 辰衛 文学散歩 桜散る神楽岡公園を歩く 2020年5月12日、桜散る神楽岡公園周辺を歩く文学散歩へようこそ。『草のうた』『銃口』『この土の器をも』「雨はあした晴れるだろう」など舞台になっています。
2020年5月3日(日) / 最終更新日時 : 2020年7月4日(土) 森下 辰衛 前川正 「あなたは、全く、素敵な人だ」― 前川正の葬儀 いまだかつて、だれも神を見た者はありません。もし私たちが互いに愛し合うなら、神は私たちのうちにおられ、神の愛が私たちのうちに全うされるのです。 1954年5月3日、午前10時より、日本基督教会旭川二条教会で前川正の葬儀が執り行われました。司式は竹内厚牧師。この日、竹内師が読んだ聖書の個所は、故人の遺言によって選ばれていた新約聖書「ヨハネ第一の手紙」4章7~21節でした。
2020年5月2日(土) / 最終更新日時 : 2020年8月29日(土) 森下 辰衛 前川正 李(すもも)― 前川秀子から綾子への手紙 抄 どうぞ、覚えてやってください。あの子は、神を恨みながら死んだのではありません。あなたに出会ったことを後悔しながら死んだのではありません。人生と運命を呪いながら死んだのでもありません。怯えながら、恐れながら死んだのでもありません。一度も何に対しても「ちくしょう!」と言わなかったのです。それだけは褒めてやりたいと思います。