舟
長澤裕子
舟(二艘) クスノキ、麦の穂 20x10x3.5センチ内(一艘)
冬の間に準備していた小品を、先日個人の方に納めさせて頂きました。
手彫りの木彫による舟型の内側には、波のような、植物の芽のようなものを彫り込み、昨年摘んでおいた麦の穂を添えさせて頂きました。
生きていると、様々な岐路、決断、あるいは別れなど、喜び、悲しみ、苦しみ、怒り、そして迷いのなかであっても、なにかの方向に目指して動かないとならない時は、必ずやってきます。
よし、と決めて動き出す事もあれば、う~ん、と戸惑いながらも動き出す事も。ある時は海原に放り出されたような、ただ漂うしかない時もあるかもしれません。それでも、時期が来れば、あるいは、何かの流れ、あるいは決断によって、それぞれにどこかに向かってゆくのでしょう。
行き着く先で、麦の種を撒き、新たに芽吹く何かは、必ずあると思うと、安心して船出……、道を歩きはじめられるのかもしれません。 (長澤裕子ブログより)
長澤裕子 yuko nagasawa 美術彫刻家。塩狩峠のある北海道和寒町在住。
旭川市春光台の「三浦綾子『道ありき』文学碑」制作者で、三浦綾子読書会会員です。この「舟」は、私のホームページ「向こう岸へ渡ろう」から発想して作ってくださいました。クスノキの匂いがとても良いです。長澤さんは『道ありき』のときもそうでしたが、テーマをゆっくりとかみ砕いてから時間をかけて咀嚼して、単純で強く、爽やかで深いフォルムを彫り出してゆかれます。2008年頃だったでしょうか、旭川空港に展示されていたミズナラの大木から彫られた「カゼノコエヲキケ」に出会ったときの衝撃があって、『道ありき』文学碑制作者として旭川市彫刻美術館から建設実行委員会に推薦があったとき、大賛成して、ぜひ長澤さんにと思ったのでした。下の写真は我が家に来てからの舟。さあ、この舟に乗って、向こう岸へ渡ろう!
このブログを書いた人
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1962年岡山県生まれ。1992年から2006年3月まで福岡女学院短大および大学で日本の近代文学やキリスト教文学などを講義。2001年より九州各地で三浦綾子読書会を主宰、2011年秋より同代表。
2006年、家族とともに『氷点』の舞台旭川市神楽に移住し、三浦綾子文学館特別研究員となる。2007年、教授の椅子を捨て大学を退職して以来、研究と共に日本中を駆け回りながら三浦綾子の心を伝える講演、読書会活動を行なっている。
著書に『「氷点」解凍』(小学館)、『塩狩峠』の続編小説『雪柳』(私家版)、編著監修に『三浦綾子366のことば』『水野源三精選詩集』(いずれも日本基督教団出版局)がある。NHKラジオ深夜便明日への言葉、テレビライフラインなどに出演。
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