2021年1月30日(土) / 最終更新日時 : 2021年3月20日(土) 森下 辰衛 おたより おたより ⑭ おたよりを紹介させていただきます。心のこもった良いおたよりをたくさんいただき、本当にうれしく励まされています。準備が記念日に整わなかったりして、しばらく記事が出せていませんが、また新しいものをと、企んでいるところです。
2020年12月31日(木) / 最終更新日時 : 2021年1月11日(月) 森下 辰衛 幸福な王子 「幸福な王子」を読む ➃ やがて、雪が降ってきました。その後に霜が降りました。通りは銀でできたようになり、たいそう光り輝いておりました。季節は非情なまでの透明な美しさで、いのちを突き刺すような冷たさを送ってきました。出歩く者は誰も彼も毛皮にくるまっているというのに、裸同然になってゆく二人を包むものはありませんでした。かわいそうな小さなツバメはどんどん寒くなってきました。でも、ツバメは王子の元を離れようとはしませんでした。心から王子のことを愛していたからです。
2020年12月30日(水) / 最終更新日時 : 2021年1月11日(月) 森下 辰衛 幸福な王子 「幸福な王子」を読む ③ つばめには分かっていたのです。「行かなければなりませんが、あなたのことは決して忘れません」などと告げることが裏切りだということも。「宝石を二つ持って帰ってきます」と言うことが裏切りを誤魔化すことであることも。何もかも与え尽くす王子と、エジプトを握ったまま手放そうとしない自分。貧しい人々に与えた分だけ宝石を補完すれば、また与えられるではないですかと言うことが、全く的外れだということも。
2020年12月26日(土) / 最終更新日時 : 2021年1月11日(月) 森下 辰衛 幸福な王子 「幸福な王子」を読む ② 王子はつばめに言いました。「ずっと向こうの」と。王子には「ずっと向こうの」お針子の女の生活がつぶさに見えるのでした。その貧しさと労苦も手の傷と荒れも、トケイソウ(passion flower=受難の花)の刺繍という仕事の詳細も、その傍に臥す病気の息子が泣きながら「オレンジが食べたい」と訴えていることも。王子はつばめに「ずっと向こう」を指さし、共に見ようと招く者でした。人は「ずっと向こうの」存在など見えもしないし見ようとも思わないものです。
2020年12月25日(金) / 最終更新日時 : 2021年1月11日(月) 森下 辰衛 幸福な王子 「幸福な王子」を読む ① この段階の愛は自分に相応しい存在を見つけようとする愛です。自己追求の道具として都合のよい存在を求める獲得欲です。それは自身の自然的性質を出ることのなかった葦と同様、自分の枠を出ない欲求に過ぎないものです。ですから出会いも求愛も別れもありますが涙はありません。獲得の失敗があるだけで、本当の悲しみなどないのです。でも自分は真剣で純粋だったと思うのです。
2020年11月30日(月) / 最終更新日時 : 2021年3月20日(土) 森下 辰衛 幸福な王子 オスカー・ワイルド「幸福な王子」を読むために 今日、11月30日はオスカー・ワイルド(Oscar Wilde 1854-1900)の命日です。ワイルドはアイルランドのダブリン出身の詩人、小説家、劇作家。オックスフォード在学中から耽美派の主導者となり、機知とダンディ振りを発揮し、ひまわりの花を胸にかざってロンドンの街を闊歩したのは有名です。彼の童話「幸福な王子」をクリスマスまでに何回かで読んでみたいと思います。