2020年11月5日(木) / 最終更新日時 : 2020年12月3日(木) 森下 辰衛 詩 ぼくはおなら ぼくはおなら ぼくはおなら くさいといわれ きたないといわれ はしたないといわれ ぶさほうといわれ きらわれもののぼくだけど
2020年9月14日(月) / 最終更新日時 : 2020年9月15日(火) 森下 辰衛 詩 あなたとぼくと宙がえり お父さん、もう一度 宙がえりしよう 明日 あなたを燃やす 窯の中で すべてが弾け飛ぶ炎熱のなかで、 宙がえりしよう
2020年9月6日(日) / 最終更新日時 : 2020年9月6日(日) 森下 辰衛 創作 カバゴジラ その人をぼくは「おねえちゃん」と呼んでいた。けれど、ときどき、機嫌の悪い時や機嫌の良いときには「カバゴジラ!」と呼んだ。ぼくに姉はいない。兄がいるだけで、二人兄弟だ。カバゴジラは、母の妹だから、本当は叔母ということになる。でもぼくは小さいころ、カバゴジラを「おねえちゃん」と呼んでいた。
2020年8月29日(土) / 最終更新日時 : 2020年8月29日(土) 森下 辰衛 創作 どら猫と一寸法師 私のあだ名はどら猫だった。これが女の子につけるあだなかよ?と思うが、いちばん私を知っている親がつけたのだから仕方ない。ぐるるる。 中学二年生の秋だった。どんな事情だったか忘れたけど、ある日曜日、私たち女の子四人と男の子四人のグループで映画を見に行った。その中に彼もいた。
2020年7月3日(金) / 最終更新日時 : 2020年9月14日(月) 森下 辰衛 被造物の福音 国境の河は深い 国境の河は深い。 河の向こうにいる、きみ。 河のこちらにいる、ぼく。 故郷では、会いたいと思えばすぐに、走って行けた。ぼくたちは、いつでも会えた。でも、今は二人の間に、国境の深い河がある。この河を越えられなかったのは、君だったのか、ぼくだったのか? 果てしなく続く、国境線の向こうとこちらで、ぼくたちは、心の中で呼び合うだけ。
2020年5月16日(土) / 最終更新日時 : 2022年2月2日(水) 森下 辰衛 創作 シオン・ガーデン うなずいたばかりで、彼は何も言わなかった。かすかにうれしいような辛いような目をして、それぞれ、あるから、と独り言のように、ぽつりと言った。 それからも僕は注意深く様子を見ていたが、二人がつき合っている様子はなかった。図書館わきのガーデンは間もなく書庫の拡張工事で立ち入り禁止になった。背の高い雑草が生い茂り始めた間から、薄紫のシオンの花が咲き始めていた。
2020年5月2日(土) / 最終更新日時 : 2020年8月29日(土) 森下 辰衛 前川正 李(すもも)― 前川秀子から綾子への手紙 抄 どうぞ、覚えてやってください。あの子は、神を恨みながら死んだのではありません。あなたに出会ったことを後悔しながら死んだのではありません。人生と運命を呪いながら死んだのでもありません。怯えながら、恐れながら死んだのでもありません。一度も何に対しても「ちくしょう!」と言わなかったのです。それだけは褒めてやりたいと思います。
2020年1月30日(木) / 最終更新日時 : 2020年3月12日(木) 森下 辰衛 創作 オムニ・バス ③ 三 中学一年の時のことだ。いつもは親の車か、自転車で通学しているのに、その日の帰り道は、二歳上の兄と一緒にバスで帰ることになった。たぶん十二月で、印刷工場で働いている親が忙しく、残業だったのだろう。ところが、バス […]
2020年1月19日(日) / 最終更新日時 : 2020年3月12日(木) 森下 辰衛 創作 オムニ・バス ② 二 福岡時代、春日原という駅の近くに住んでいたころのこと、家の近くから勤めていた学校の近くまで一本で行けるバス路線ができた。春日原の駅近くから出て、ぐるっと回ってまた春日原に帰って来る循環式のバスだった。 バス […]