2020年12月24日(木) / 最終更新日時 : 2020年12月24日(木) 森下 辰衛 試作的思索 飼い葉おけのみどり子 「あなたがたは、布にくるまって飼葉おけに寝ているみどりごを見つけます。それが、あなたがたのためのしるしです。」(新改訳・2017年版)ここで「布にくるまって」と訳されているギリシャ語εσπαργανωμενον(エスパルガノゥメノン)は、「細長い布に包まれた(者を)」の意の受動型の動詞です。手元にあるフランス語訳でもemmaillotéという受動型の語が使われていて、意味として「くるむ」のほかに、「包帯を巻く」、「束縛する」という意味も持っています。
2020年11月8日(日) / 最終更新日時 : 2020年11月8日(日) 森下 辰衛 被造物の福音 エデンの園のリンゴ作り-木村秋則の仕事 今日11月8日は、木村秋則(きむらあきのり)さんの誕生日。木村さんは、世界で初めて無農薬・無施肥のリンゴの栽培に成功した青森県の農園主です。木村さんのしたことは、人類がおこなってきた農業そのものへの問いであり革新でした。命との和解と共存。それは人間が、エデンの園の管理者に戻るということを意味していました。
2020年11月3日(火) / 最終更新日時 : 2020年11月3日(火) 森下 辰衛 被造物の福音 傷つけ合うのとは別の原理で-手塚治虫とキリスト教 手塚治虫は1928(昭和3)年11月3日に生まれました。戦後日本におけるストーリー漫画の第一人者として驚異的な仕事量で活躍しました。手塚治虫の中期の傑作に『きりひと讃歌』がありますが、主人公は「小山内桐人」(おさないきりひと)、すなわち「幼い」「切る人」(手術する人)と、「キリスト」とを重ねた命名で、次々に襲う受難の中を真理と生命への愛に生きる若い医師を描いています。
2020年10月5日(月) / 最終更新日時 : 2020年10月5日(月) 森下 辰衛 試作的思索 いのちから離れるほど毒化する ― 食べ物と健康についてのたわごと 7年ぐらい前、近くの病院に行き健康診断を受けましたが、送られて来た結果を見ると「コレステロールが要治療レベルです。医療機関で受診してください」と書かれていました。ギョッとしましたが、自覚症状がなかったこともあり、病院に行きませんでした。母が似た体質で薬を飲み続けていて見当がつきましたので、まずは別の方法を試してみようと思ったのです。
2020年7月18日(土) / 最終更新日時 : 2020年7月18日(土) 森下 辰衛 コロナの時代に 澄んだ清らかな目で 三浦綾子さんの短篇小説「病めるときも」は1942(昭和17)年7月の洞爺湖温泉から始まります。ここで二十歳の藤村明子は、清らかなまなざしを持つ青年久我克彦と出逢いました。大学医学部の研究室で放線菌の研究をしているという克彦の澄んだ清らかな目に、キリスト者の家に育った明子はひかれ、翌年には婚約をかわしました。
2020年7月3日(金) / 最終更新日時 : 2020年9月14日(月) 森下 辰衛 詩 国境の河は深い 国境の河は深い。 河の向こうにいる、きみ。 河のこちらにいる、ぼく。 故郷では、会いたいと思えばすぐに、走って行けた。ぼくたちは、いつでも会えた。でも、今は二人の間に、国境の深い河がある。この河を越えられなかったのは、君だったのか、ぼくだったのか? 果てしなく続く、国境線の向こうとこちらで、ぼくたちは、心の中で呼び合うだけ。
2020年4月19日(日) / 最終更新日時 : 2020年7月4日(土) 森下 辰衛 試作的思索 「取り除かないでください」と祈る 世界屈指の観光地であるベネチアから観光客が消えて、運河に魚が戻って来たと言う。世界中の人が少なくなった都市の市街地にピューマや象やサルの群れや鹿たちが、あるいは今までどこにいたのだろうというような鳥や動物たちが出て来ているらしい。
2020年4月14日(火) / 最終更新日時 : 2020年7月7日(火) 森下 辰衛 被造物の福音 黒き馬静かに蹄切られ居り ― 三浦光世の短歌 ③ 黒き馬静かに蹄切られ居り曲げし前足を人に抱かれて まだ馬が輸送や農耕に使われていた時代でした。でも、何千年も続いて来たその関係が終わろうとしていた時代でした。北海道でも馬橇や馬車は昭和三十年代から四十年代には急激に減って、自動車に代ってゆきました。