2020年12月30日(水) / 最終更新日時 : 2021年1月11日(月) 森下 辰衛 幸福な王子 「幸福な王子」を読む ③ つばめには分かっていたのです。「行かなければなりませんが、あなたのことは決して忘れません」などと告げることが裏切りだということも。「宝石を二つ持って帰ってきます」と言うことが裏切りを誤魔化すことであることも。何もかも与え尽くす王子と、エジプトを握ったまま手放そうとしない自分。貧しい人々に与えた分だけ宝石を補完すれば、また与えられるではないですかと言うことが、全く的外れだということも。
2020年12月25日(金) / 最終更新日時 : 2021年1月11日(月) 森下 辰衛 幸福な王子 「幸福な王子」を読む ① この段階の愛は自分に相応しい存在を見つけようとする愛です。自己追求の道具として都合のよい存在を求める獲得欲です。それは自身の自然的性質を出ることのなかった葦と同様、自分の枠を出ない欲求に過ぎないものです。ですから出会いも求愛も別れもありますが涙はありません。獲得の失敗があるだけで、本当の悲しみなどないのです。でも自分は真剣で純粋だったと思うのです。