2021年1月1日(金) / 最終更新日時 : 2021年1月12日(火) 森下 辰衛 三浦綾子 「お前の手に負える額ではない」―“馬鹿正直”な人の普通のお正月 昭和三十八年元日の夕べ、棚卸しでくたびれたわたしは、わたしの父母の所に年始に行った。父母は、わたしの住むすぐ近所に越して来ていた。わたしが長年療養したことも、祟ったのだろう。家も土地も売り払い、五軒長屋のような、小さなアパートに移り住んでいたのだ。年も七十を過ぎてから、長年住み馴れた家屋敷を手放すことは、どんなにつらかったことだろう。