2020年6月15日(月) / 最終更新日時 : 2020年7月4日(土) 森下 辰衛 文学散歩 「向うに見えるのが知床だよ。ゴメが飛んでいるだろう」 斜里の海で ① オホーツク海に面したS町に着いたのは、ちょうど昼頃であった。駅前を出たわたしの影が、地に黒くクッキリと短かったことを覚えている。 1949年6月のはじめ、堀田綾子はオホーツク海の「S町」(斜里)に出かけて行きました。結核発病後も数年間婚約をそのままにしていた相手西中一郎の家を訪ね、結納金を返して婚約解消し、死のうと思い定めていました。