2021年7月13日(火) / 最終更新日時 : 2021年7月13日(火) 森下 辰衛 三浦綾子読書会 “最後まで耐え忍ぶ者は救わるべし”- 黒江勉さんを偲んで 2021年1月28日、黒江勉(くろえつとむ)さんが95歳で亡くなられました。三浦夫妻と最も長い期間友人であった方の一人で、前川正と三浦光世の両方を生で見たことのある数少ない証言者の一人でもありました。 黒江さんは1925(大正14)年6月12日、父三郎さん、母トヨさんの第一子長男(五人兄弟となる)として札幌で生まれました。
2020年12月28日(月) / 最終更新日時 : 2023年6月28日(水) 森下 辰衛 小説 李(すもも)―前川秀子から綾子への手紙 抄3 三月末、ぬかるんでいた道の雪も少なくなって、馬糞風が吹き始めるころでした。札幌の大学近くの下宿の住所で、あの子から葉書が来ました。大学病院で診てもらった結果を簡単にしるしたあと、「一年遅れの成人のお祝いのようです」と、一行書かれていました。青いインクのいつもと変わらない文字でした。それから、身の回りの片づけをして旭川に帰って来た日、夕食が終わって、お茶を出すとき、柱時計が八回鳴りました。
2020年3月21日(土) / 最終更新日時 : 2020年7月7日(火) 森下 辰衛 三浦光世 幼吾ら三人を置きわが母を置き ― 三浦光世の短歌 ① 幼吾ら三人を置きわが母を置き昭和二年父逝けり三十二才にて 1927(昭和二)年、三歳で父を喪った光世さんが、勿論そのときには何も分かる年齢ではなかったのですが、長い時間を経て、大人になり、わずか三十二歳で逝った父貞治さんのこころを思って詠んだ歌です。まだ二十代だった妻シゲヨさんと幼い三人の子ども(長女は既に親族の家に養子に出していました)を置いてゆかねばならなかった辛さを想いみると、きっと一人一人のこれからへの心配に、父は胸が絞られるようだっただろう。