2020年7月19日(日) / 最終更新日時 : 2020年7月19日(日) 森下 辰衛 三浦綾子を読む 「最愛」― 開け放たれた庭にバラが咲いた― 三浦光世の短歌⑤ その日は、彼と初めて会った日のように、美しく晴れ渡っていた。わたしは、開け放たれた庭を、ベッドの上に起き上って眺めた。大輪のバラがほころび、わたしは何かいいことがあるような予感がした。忘れもしない七月十九日だった。三浦光世から部厚い封書が届いた。手紙には、あなたの死んだ夢を見て、涙のうちに一時間あまり神に祈った。役所に出勤しても、しばらく瞼が腫れていたとあり、わたしの名の上に「最愛なる」という字が冠してあった。