2020年6月18日(木) / 最終更新日時 : 2020年7月4日(土) 森下 辰衛 文学散歩 ベッドの中の澄んだ大きな瞳は美しかった 案内された堀田綾子の六畳の病室はクレゾール匂う装飾のない質素な部屋でした。木製のベッドの上に彼女は身を横たえていました。ギプスベッドで寝返りも打てないその人の顔はむくみを帯てはいましたが、澄んだ大きな瞳は美しく印象的でした。 「寝ているだけの病気です」 ベッドの傍らで聴いたその声は澄んでいて、弱々しい響きではありませんでした。