三浦綾子、最後の祈り~『銃口』下
『銃口』は三浦綾子の最後の祈りでした。全身全霊をこめた、最後の命を絞りつくすようにして注ぎ出した、この国のために捧げた祈りでした。昭和の戦争を体験した者であるからこそ、作家人生と地上の人生の終わりに臨んで、語っておかなければならない遺言でもありました。たぶん多くの遺言は、その人の最後の祈りでもあるでしょうが、三浦綾子においては『銃口』がそれでした。国のこと、戦争のこと、教育のこと、東アジアの和解と平和のこと。でも、それ以上に、庶民が苦難の時代のなかで、ただ良い心で人間として生きたかっただけなのに、それを許さなかった権力の暴虐と、それが許されなかった悲惨と。しかしその中で、にもかかわらず人間として生きようとする心の高貴さと、その生が放つ圧倒的な光芒。
坂部久哉、山田佐登志、金俊明、近堂弘。主人公北森竜太が出会う人物たちを通して放たれるその光は、昭和から平成の時代を貫き、そして今の私たちの道の光にもなります。三浦綾子が私たちに、その命ごと遺し与えてくれた希望。それを、読みましょう。
今週土曜日、10月16日(土)14:00~ 東京中野読書会主催の講演会で『銃口』下巻についてお話しします。

このブログを書いた人

- 三浦綾子読書会代表/三浦綾子記念文学館特別研究員
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1962年岡山県生まれ。1992年から2006年3月まで福岡女学院短大および大学で日本の近代文学やキリスト教文学などを講義。2001年より九州各地で三浦綾子読書会を主宰、2011年秋より同代表。
2006年、家族とともに『氷点』の舞台旭川市神楽に移住し、三浦綾子文学館特別研究員となる。2007年、教授の椅子を捨て大学を退職して以来、研究と共に日本中を駆け回りながら三浦綾子の心を伝える講演、読書会活動を行なっている。
著書に『「氷点」解凍』(小学館)、『塩狩峠』の続編小説『雪柳』(私家版)、編著監修に『三浦綾子366のことば』『水野源三精選詩集』(いずれも日本基督教団出版局)がある。NHKラジオ深夜便明日への言葉、テレビライフラインなどに出演。
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