『国籍を天に置いて 父の手紙』ご紹介とご案内
“此の子と共に主在せ”
『国籍を天に置いて 父の手紙』~終戦直前ルソン島で戦死したキリスト者が日本の妻に送った手紙集
1945年の敗戦直前、三井物産マニラ支店勤務から現地召集され戦死したクリスチャン小林儀八郎さんが日本の妻正子さんに宛てた手紙集『国籍を天に置いて 父の手紙』を紹介します。
儀八郎さんの次女、小早川(旧姓・小林)順子さんが序文を書いておられます。順子さんは、月一回(第一土曜8:30~10:00)ZOOMで開催しています三浦綾子『天の梯子』読書会のメンバーです。
はじめに
不思議なことですが、最近になって若くして戦死した父の手紙が見つかりました。 それは厳しい戦時下にあって、クリスチャンとして神を愛し、家族を愛し、最後まで人生を全うした尊い証でもありました。
孤独の中で神を見上げるとき、残されたこの手紙によって父を知らない私も父の魂と出合うことができ、これを通して神の愛を知り、多くの慰めを与えられました(このことを深く感謝 しております)。
この手紙を私的なものとして埋もれることなく、 主の証として用いられることが、みこころではないかと思い、本にまとめさせていただきました。これが苦難の中にある人々への希望と力になりますように願っています。
これによって神だけが、栄光をお受けになりますよう祈ります。
1941年10月12日 上海から妻正子さんへの手紙(抄)
菊薫る秋が来た。心も身もひき締めたい。新しき生命のために祈ろう。身体も能力も、吾々の思う如くではなく与え給う者の聖旨による。只願う信仰の与えられんことを。私には何物も善きものはない。御恩寵により若き日に覚えしめられた造り主のみが私の生命であり、祝福であり、宝であった。苦しかった日、楽しかった日、今の幸なる身の上。凡てが彼によりて感謝である。「男児であれ、女児であれ、此の子と共に主在せ。」親となる者の与え得る祝福の唯一つにして最大なるものが之であると思う。
儀八郎より 懐かしきマーチャンと私共の子供へ
小林儀八郎さんの略歴
1911年 新潟県三条市生まれ。
1939年 無教会派の集会で出会った田中正子と婚約。三井物産ロンドン支店に勤務。
1940年秋 上海支店に転勤。日米開戦直後、日本で田中正子と結婚。
1944年夏 危険を覚悟でマニラ支店に転勤
1945年 米軍上陸直前に現地召集、7月25日ルソン島で戦病死 享年34歳。
※ 過酷な世界情勢の中で、結婚間もなく愛する子を妊娠して日本に帰った妻に宛てた手紙。柔らかな手触りの見事な文章のなかに、妻とお腹の子どもへの愛と深い信仰が読み取れるすばらしいものです。ひとのラブレターを覗き見る恥かしさも超えて、感動を与えられる、そしてあの激動の時代のリアルな証言記録ともなる書簡集。どうぞ、お読みください。
『国籍を天に置いて 父の手紙』 発行 小早川順子 私家版 A5版152頁 2014年12月24日
※20冊ほどお預かりしています。お読みになりたい方は下記にご連絡ください。本代は小早川さまのご好意で無料。送料のみでお送りします。
ご注文、お問い合わせは shiokaripass@gmail.com(森下辰衛)まで
このブログを書いた人

- 三浦綾子読書会代表/三浦綾子記念文学館特別研究員
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1962年岡山県生まれ。1992年から2006年3月まで福岡女学院短大および大学で日本の近代文学やキリスト教文学などを講義。2001年より九州各地で三浦綾子読書会を主宰、2011年秋より同代表。
2006年、家族とともに『氷点』の舞台旭川市神楽に移住し、三浦綾子文学館特別研究員となる。2007年、教授の椅子を捨て大学を退職して以来、研究と共に日本中を駆け回りながら三浦綾子の心を伝える講演、読書会活動を行なっている。
著書に『「氷点」解凍』(小学館)、『塩狩峠』の続編小説『雪柳』(私家版)、編著監修に『三浦綾子366のことば』『水野源三精選詩集』(いずれも日本基督教団出版局)がある。NHKラジオ深夜便明日への言葉、テレビライフラインなどに出演。
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