2020年7月1日(水) / 最終更新日時 : 2020年7月6日(月) 森下 みかん 小説 旭川G7 ⑥ だれかが俺を 土手の、下の道を歩いていると、上の道をジイが行く。買い物カートを押してゆっくりと……。私も、自転車を押してゆっくりと。離れているけど並んでいる。お日さまニコニコ。ジイもニコニコ。あれっ!ジイが消えた。
2020年6月17日(水) / 最終更新日時 : 2020年7月6日(月) 森下 みかん 小説 旭川G7 ⑤ 名前 「あ、ゆうこちゃん!」 そのジイは、私を見るなり、そう言った。私はそのとき、図書館のソファでくつろいでいたが、はっとおどろいて顔を上げた。その顔に、ジイはぐっと自分の顔を近づけて、私よりももっとおどろいた表情で、「ゆうこちゃんかい?」 と話しかける。なつかしさとうれしさでいっぱいになったその顔に、「あ、ちがいますけど」とこたえる私。それでもジイはあきらめない。「いやあ、そっくりやあ。ゆうこちゃんそっくりやあ」
2020年5月20日(水) / 最終更新日時 : 2020年7月6日(月) 森下 みかん 小説 旭川G7 ③ エチケット その日、私はホーマックに入ろうとしていた。ホーマックの入り口は二段階あって、どちらも自動扉だが、まず、第一の扉。そこを進むと、手の消毒液がおいてあり、自転車のかごやトイレットペーパーなどがおいてある。そこから五、六歩あるくと、こんどは第二の扉があって、そこから先が本格的な店である。 その日、私は、ちょうど第一の扉を通過したところであった。そして私の前では、ひとりのジイが、第二の扉を通過して、店の中に入っていった……。
2020年5月6日(水) / 最終更新日時 : 2020年7月6日(月) 森下 みかん 小説 旭川G7 ② 特等席 「おーい。こっちだよ」 遠くから、ジイが手をふっている。手をふって走りだす私。まるでラブロマンスの映画のひとコマ。行ってみると、階段の上に、茶色い毛布が敷いてあった。さっき、くるくると巻かれて自転車につんであった、ああ、あれは、これだったのかと納得。