2020年6月3日(水) / 最終更新日時 : 2020年7月6日(月) 森下 みかん 小説 旭川G7 ④ 一円玉 前の人の財布から、ポーンと一円玉がとび出して、床に落ち、ころころところがっていったのを見たのだった。私は使命感にかられてしまった。なんとしてでも自分が拾ってあげなくては、と思ったのだ。すぐに拾えるはずだった。さっと拾って「はい、どうぞ」と、手わたしてあげられるはずだった。ところが一円玉は倒れもせず、とまりもせず、ころがりつづけた。そしてついに、お菓子売り場のほうまで行ってしまった。 「あれっ、待ってー」